第4回:Illustrator問題2

課題内容:ポスター・リーフレット・クイズの制作

「問題2:ポスター・クイズ・チケットの制作」では、水族館のポスター・リーフレット(クイズ)・チケットを制作する課題が出題されました。商業印刷物としては定番の商材ですが、その制作方法として複数のアートボードでの制作求める点が特徴的な問題でした。

【問題文全文】

この課題の問題文を確認したい方は、こちらのPDFをご覧ください。

出題の意図

商業印刷物の定番とも言えるポスターやリーフレット、また後加工でミシン目を入れるチケットをIllustratorの複数アートボードで制作する問題です。Illustratorで印刷データを制作する場合には、トンボを含めたアートボードを台紙として用意し、その中でデザインデータを制作する手法が長年使われてきました。
しかし、Illustratorの開発元であるアドビシステムズが推奨する印刷データ運用を目的とした手引書「PDF &出力の手引き」では、仕上がりサイズのアートボードを使用したデータ制作やPDF入稿が推奨されています。こうした環境の変化に柔軟に対応するため、アートボード機能を活用した課題を提示するとともに、継続的に受注する案件という前提で、今後修正加工が行われることを想定したIllustratorデータの提出を求めました。
印刷案件の中には、月・年度単位でデザイン・配色を変更するものや、定型データの訂正処理を継続的に行うものが多数あります。その際、ベースとなるIllustratorデータが、誰が見てもわかりやすく迅速に操作できるよう設計されていると、より効率的に業務を進めることができます。このようなデータは、印刷企業にとって有益な資産になり得るとの思いから、出題に至りました。

完成見本

完成見本

課題のポイントと必須技能

今回のアートボードを活用したデータ制作では、「複数のアートボード管理のための機能」を使用していること、誰が見てもわかりやすい「レイヤー構造」になっていること、効率的に運用するためのスタイル機能(文字スタイル・段落スタイル・グラフィックスタイル)やアピアランス機能の利用、画像に対するIllustrator機能の活用が高得点のポイントとなります。

アートボードパネルアートボードパネルオプション
▲アートボード名称の管理や表示ガイドの利用は、以降の操作で作業効率をあげることができる。
フチ文字
▲フチ文字の場合、テキストオブジェクトに対して、【オブジェクトのアウトライン】(効果メニュー>パス)によって仮想的にアウトライン化した状態をつくり、塗りを追加して【パスのオフセット】(効果メニュー> パス)でフチ幅をmm単位で指定する。

この課題で一番の難所は?

印刷データ制作で利用する機会の少ない「モザイク機能」や後加工への指示を考慮したチケットの「ミシン目」の処理などが難所として挙げられます。モザイク機能は、画像をモザイク加工する機能で「オブジェクト」メニューに以前から存在しています。印刷業界では画像に対する加工はPhotoshopで処理するのが一般的であり、Illustratorで直接画像を加工する機会は稀ですが、ビットマップ画像をベクトルデータへ変換する場合やデザイン表現の一つとしてモザイク機能を理解しておくと制作の幅が広がります。

モザイク

▲配置画像のサイズをモザイクタイル1個のサイズで除算してタイル数を割り出し指定する。今回の場合、幅が約80mmの画像を約2mmのタイルでモザイク処理したいため、幅40個、高さ29個のタイル数を指定。この流れをアクション機能などに登録しておくと、別画像の処理でも効率的に運用できる。
「オブジェクト」メニュー>「ラスタライズ」の後、「オブジェクト」メニュー>「モザイクオブジェクトを作成」>「タイルの間隔」の幅を約2mm に指定、さらに「効果」メニュー>「形状に変換(楕円)」を使用。

課題出題者からのメッセージ

複数アートボードの活用、継続受注時の作業効率化をテーマとした課題を出題しましたが、本課題に寄せられた受験者の声として、「実務で活かせそうな機能があった」「今回増えた技術を活かしていきたい」など、課題への取り組みで得たものを実務に役立てたいというご意見があり、非常に嬉しく思いました。“DTP オペレーターのスキルアップ”という本コンテストの意義をご理解いただけたことに深く感謝します。

注意事項

課題解説で紹介する手法は、この課題において模範となる例であって、その内容が各社の手法と異なる場合、それを否定するものではありません。ご理解とご了承をお願いします。